祝!中部横断自動車道開通

清水の記憶

 

 戦前から戦後の高度成長期にかけて、港橋と横砂を結ぶ市内電車(チンチン電車)が走っていた。沿線に住んでいた小生は、清水の街に行くと言えばこの電車を利用し、旅行以外にバスに乗ることは殆どなかった。しかしながら、昭和49年の七夕豪雨で庵原川に掛かる鉄橋の橋脚が傾き、さつき通りを電車が行き来し交通安全性に問題があるなど総合的な判断の結果、その後一度も走る事なく廃止された。

 その代替として、港橋と横砂(現在の横砂南町バス停)の間に港橋横砂線というバス路線ができた。この路線は清水駅前のバスターミナルには入らず、バス停が港橋方面は現在のホテルクエスト前、横砂方面は旧西友前に置かれていた。

 後に静岡鉄道の関係者から聞いた話であるが、チンチン電車で最後まで残った清水市内線を、従前から静鉄としては廃止したかったそうだ。豪雨による橋脚の破損はその切っ掛けを作ってくれた、言ってみれば渡りに船の出来事だったのかもしれない。

 その西友前のバス停での出来事である。もう30年以上前になるだろうか。家に帰ろうとバス停に向かうと、幼なじみで同級生のR子がバスを待っていた。彼女はお嬢様学校を卒業し、清水市役所で正規職員として働いていた。

 そのR子と、バスを降りて自宅のそばで別れるまで色々な話をした。当時、彼女は中部横断道路を誘致する部署で働いており、国が定める高規格幹線道路網に組込んで貰えるよう、積極的な誘致活動を展開していた。話によれば、東名高速道路、中央自動車道といった東西に延びる高速道路網を南北に結ぶ路線としての存在意義はあるものの、トンネルが多いなど採算性に問題があるのか、誘致活動が難航しているようであった。

 また、第一優先順位は清水市(当時)にあるものの、清水市の誘致失敗を富士市が狙っているようで、「ヘタをしたら富士に取られちゃう」と予断を許さない現状の裏話まで紹介してくれた。富士ルートならば、全長5千メートルの樽峠トンネルも必要ないだろうし、多額の建設費用が必要な清水への誘致が困難を極めたのは、容易に想像できる。

 結果として、山梨県内の一部区間を国の新直轄事業に置き換えるなど費用を圧縮し、難産ではあったが無事に国土開発幹線自動車道の路線に組み入れられ、建設が決まった。それから30年余、事の遅れで何度か開通予定が延長された末に今日、待望の県内部分開通を迎える事ができた。

  静岡県として初めてとなる、本格的な南北軸の開通である。東名、新東名などの東西軸に加えて北に向かう新しい交通軸の誕生である。南に向かっては清水港から世界に向けての海路が通じていることから、清水にとってどれ程の経済効果をもたらしてくれるか、期待したいものである。

 然るに、昨今の静岡市政はどうであろう。 清水いはらICと国道1号バイパスを結ぶ県道75号(清水富士宮線)バイパスは中部横断自動車道の開通より早く完成予定だったが、もう何年も前に延期となり、完成がいつになるのか目途さえ立っていない。

 地元の理解が得られず土地買収が遅れているようである。市と庵原地区住民の間は、ごみ焼却場の建設問題がこじれてから良好な関係が築けていないと聞くが、ならば信頼関係を構築すべく市長自らが出向き、地元と向き合うべきではないだろうか。

 サッカー球技場にしてもそうである。2年程前に行われた清水区民とのタウンワーキングの場で、東燃敷地にサッカー球技場が描かれた大きなパネルを 田辺市長自らが市民の前に掲げ、さも建設計画が進行中であるかのような印象を与えた。ところが、実際に市が行っているのは、Jリーグ基準に達していない日本平スタジアムの洋式トイレの数を増やすべく、和式を洋式に変えるための予算計上だそうである。新球技場の計画があるならば、日本平の改修をする筈はない。

 正直な気持ち、田辺市長という人間の本質が不可思議でならない。普通の感覚であれば、市長という公職にある人間が市民の面前でサッカー球技場の完成予想図を掲げたのであれば、それなりの裏付けがあると信じ、市民が期待を込めるのはごく自然である。仮に何ら根拠がなかったのであれば、正に清水区民を裏切る行為であり、市長という公職に就く資格はないでろう。

  ともあれ、今日は素直に中部横断道路の開通を喜ぶ事にしよう。長野県の白樺や蓼科に旅行で行く時など、悪路の国道52号を避け、御殿場から中央高速経由で行き来した事が 何度となくあった。今回の部分開通で残り20数キロとなり、この位であれば、行きは北進、帰りは南下で利用できそうである。来年度中には全線開通が予定されているとの事で、先行きが楽しみである。

  山梨や長野方面からの車が増えると、今でさえ混雑している港湾道路の渋滞が一層激しくなりそうで、何とか早急に対策を取って貰いたいものである。

2019年(平成31年)3月10日

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