川勝知事と「静岡」

清水の記憶

 「静岡市役所に十数人いる局長の中で旧清水市役所の出身者は一人もいない」。 2年ほど前になるだろうか。川勝静岡県知事が記者会見の場で語った内容である。この発言で、川勝知事が批判する静岡市に清水が含まれないと分かった。

 旧静岡市の職員と旧清水市の職員に能力差がそれ程ある訳でもあるまいに、この様な恣意的な人事が行われていたとは、清水の人間として憤懣やるかたない。知事は、静岡市役所の指示命令系統が旧静岡市側によって牛耳られている事を、局長の出身を例に出し明らかにした。知事と市長との対立はそれより数年も前から続いていたが、旧静岡市から続く旧態依然とした「官僚的な体質」と戦っていたのである。

 清水港の港湾機能は、新興津埠頭など県による積極的な投資が続いている。また、運営会社が本年3月で撤退を明らかにした駿河湾フェリーについては、フェリーの存続を前提に難波副知事がまとめ役となり、県と6市町による支援体制を早々と構築し、4月以降の運行継続が確実なものとなった。

 そういえば、平成29年6月に行われた静岡県知事選挙では、川勝候補と溝口候補の一騎打ちであった。開票結果は静岡市のみ溝口候補の票が川勝候補のそれを上回ったが、内訳をみると、葵区が5万767対4万1736、駿河区が3万7562対3万3304で溝口候補の票が多かったのに対して、清水区は4万7840対4万512で川勝候補が多かった。港に関係する仕事に従事する割合が多い清水の住民は、県による清水への思いやりを肌で感じていたのであろうか。合併以来続く静岡優位の市行政に対する反発も、投票結果に影響したのかもしれない。

 民放による川勝知事への新春インタビューの中で、知事から清水駅前に3万人規模の競技場を建設する構想が飛び出した。2014年に知事は東静岡駅北口にサッカースタジアムを作るべきと発言しているが、 この新春インタビューで、「清水エスパルスなのだから、清水につくるべき」と軌道修正をした。民放のインタビューとは言え、映像を通して県民に報道されるのを承知の発言でもあり、何らかの裏付けがあっての事と期待したいものだ。

 ここで気になるのが、4月に行われる見込みの静岡市長選挙である。現時点で立候補を表明しているのは、現職の田辺静岡市長だけだが、駿河湾フェリーの運行継続を主導した難波副知事の著書の出版記念パーティが、今月下旬に開催される事になっており、その際に静岡市長選挙に出馬表明するのではないかとの観測が出ている。清水駅前の競技場構想は、難波副知事の出馬と何らかの関連があるのであろうか。

 川勝知事は、昨年11月に開かれた連合総会の席で、三保の松原の整備が不十分だと田辺市長を批判している。前回の県知事選以後は争いを封印した筈であったが、清水庁舎の移転建設や県庁傍への文化施設建設などハコモノ行政への批判を展開しており、静岡市政に対する攻撃が再燃している。

 昨年末、静岡市議会の自民党市議団は、今度の静岡市長選挙において田辺現市長を推薦する事を決めた。これを受けて、市内に4つある自民党支部のうち、蒲原支部と由比支部が田辺市長の推薦を決定した。残るは静岡支部と清水支部であるが、静岡支部は天野進吾県議会議員などが川勝支持派と見られているが、順当に行けば支部としては田辺支持となるだろう。

 問題は清水支部である。もとより清水経済界の田辺現市長に対する不満は強い。就任以来8年が経過して清水はどうなったか。90億円も掛けて市庁舎を清水駅前に持って来るというが、市役所の本庁部門を全て静岡庁舎に移管するのが前提の新清水庁舎であり、実質的な区役所化である。

 その辺も踏まえて、清水経済界では、経済局を清水庁舎に残す様、市長に注文を出した。自民党清水支部が田辺現市長を推薦する条件の一つと思われるが、本庁機能の静岡集約を目論む静岡市の組織中心が受けるか、先ずは見守りたい所である。

 川勝知事の腹心である難波副知事が静岡市長選挙に立候補したとして、勝利する目算はあるのだろうか。大きく、静岡対清水では人口が2対1である。これをベースに考えたい。

 清水の票は川勝派優位だろうから、具体的には静岡の有権者をどのくらい取り崩せるかという事が重要である。川勝知事が昨年11月に連合の総会に出席したと書いたが、これはも連合に対する支援要請の一環である。もとより知事は民主党系が支援地盤であり、連合の票は期待できるだろう。次は公明党の票である。2017年の静岡県知事選挙では、自主投票を決めた公明党であるが、川勝派の支持に回るか否か、これは何とも言い難い。結果、静岡における田辺批判票がどれ程出るかが、雌雄を決する鍵になりそうだ。

 清水に生まれ、この地で暮らし地元の声を聞いていると、田辺現市長に対する不満は強い。 清水庁舎をコンパクトにして区役所化するために、桜ヶ丘病院の移転先を津波浸水区域に決めるなど、何をかいわんやである。

 清水庁舎は現庁舎の改修で、桜ケ丘病院の移転先は桜が丘公園に、90億円から庁舎の改修費用を差し引いた残りでサッカー競技場を、これが清水の総意ではないだろうか。いずれにせよ、川勝知事派が選挙に立つか否か、今月中には結論が出る。楽しみである。

2019年(平成31年)1月14日

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